山里亮太は『ポジティブモンスター』だ。~「天才はあきらめた」山里亮太~
山里亮太は『ポジティブモンスター』だ。
「山里亮太がポジティブ?ネガティブだろ?笑」という皆さんの声が聞こえてくる。
TV、ラジオでの彼はひねくれたネガティブな思考からの妬み、嫉みを武器に活躍しているイメージが強いからだ。
私もそう思っていた。しかしこの本を読んで180度考えは変わった。
山里亮太はノンスタイル井上ばりの『ポジティブモンスター』だったのである。
彼は、良い事はもちろん、嫌な事すらすべて燃料として努力をし続けられる。
その思考を「芸人」のエピソードも織り交ぜつつ紹介していきたい。
「天才はあきらめた。だけどその瞬間、醜い感情は一気に自分の味方になった。」
「その感情を燃料に変換させるワザを使うことで努力というしんどい行動が簡単にできるようになった」
◎山里亮太の原点
山里少年は誰もが持つ『何者かになりたい』という大きなゴールを持つ。
しかしこの大きなゴールでは、挫折が早い段階で来る。
それを防ぐために『モテたい』というオーソドックスな目標、感情を隠れ蓑にすることを選んだ。
彼にとって「モテたい」という感情は恐るべき燃料となった。彼はどんなことにも耐えられた。
◎芸人を目指すための張りぼての自信を作る
芸人になることを決めた山里少年。
しかしお笑い芸人を目指すことを親に話した時こんなことを言われる。
『やめなさい、今まで一緒に暮らしてきたけどお前でそこまで笑ったことがない』
同様のエピソードが他の芸人でもある。
オードリー春日だ。春日もお笑い芸人を目指すと父親に伝えた時こう言われた。
『お前が産まれて22年経つけど、お前が面白いことを言ったことを一度も聞いたことがない。お前で笑ったことがない』
それでも彼はおもしろい友達から言われたお笑いやってみたらの一言、 自分の発言が学校でウケたことなど些細なことを自信として「張りぼての自信」を作った。
この自信を夢へと向かわせてくれる原動力に変えた。
そのうえで全ての行動をお笑い芸人になるためという意味付けをして
実行⇒ほめてあげるの繰り返しで大きな自信に繋げた。
◎人見知りを武器に変える
極度の人見知りの山里。「こういうとこう思われるんじゃないかな?ならどう言ったら喜ばれるんだろう?」と、人見知りにもう一つ問いを足すことで芸人としての武器に変えた。
人見知りの芸人には、岡村隆史、有吉弘行、若林正恭、バカリズム、タモリなどがいる。
その中でも特に驚くのは、アンタッチャブル山崎も実は人見知りであるということだ。
◎運がいいと思う
自分は運がいいと山里は本書の中で繰り返し言う。
人と出会う運が抜群に良いと。たしかに仲睦まじい家族。寮の先輩。
悪行三昧の山里についてきてくれた元相方のM君、富男君、しずちゃん。
山里の面白さに惚れ込みサポートをしてくれた大手企業の亀井さん、元マネージャー片山さん。
千鳥大悟、芸人仲間。挙げるとキリがない。
運がいいと思う人間はネガティブなのだろうか?
◎天才ぶる(尖る)ということ
山里は自分が天才ではないことにコンプレックスを持ち、天才ぶるような言動を意図的にしていた。
それは、本書で山里が憧れネタを見て圧倒的な敗北感を感じたという千鳥、笑い飯に関しても同様だったらしい。山里には天才に見えたであろう、千鳥、笑い飯にもこんなエピソードがある。
このエピソードはオードリーのANNにてノブ本人からも語られている。
どのくらい尖っていたのかというと、吉本の芸人が
先着順で劇場の出番がもらえるというものがあった時には他の芸人が律儀に立って
並んでいるのだが、千鳥と笑い飯の四人はスカジャンを着こんで、その場に座り込み、
缶ビールを飲んでいたらしい。
しかしノブは付け加えて言う。「でも、俺たちは一番最初の列に並んでいたからね」
めっちゃ朝早起きして、コンビニでビールを自分達で買ってあえて悪ぶってたのだそう。
天才ぶる=尖るということ。誰しも芸人は天才に憧れるのが分かるエピソード。
◎しずちゃんを相方に選んだわけ
男女コンビは競争相手が少ないから。
売れるためにどうすればよいかの戦略は他の芸人も多く語っている。
ここでハライチ岩井、キングコング西野を紹介したい。
ハライチ岩井は売れるために王道の漫才は避けたとゴッドタンで語っている。
「王道の漫才はクソだと思ってるんですよ。
時間かかるだけ。だから俺らはやらなかったんですよ。
すぐ売れたいから。王道の漫才ですぐ売れたいって言ってるヤツ見ると「何言ってんだバカじゃねーの」って俺は思います。」
キングコング西野
ダウンタウンさんの『ガキの使い』のトークの影響が大きかったように思いますが、当時、「ボソッと(天才的に)面白いことを言う」という芸風が主流で、漫才は“発想至上主義”でした。
僕は「1年以内にブレイクしなかったら辞める」といって実家を出てきた手前、その、人口の多い競技に参加してしまうと(参加することを美徳としてしまうと)、時間がかかると判断。
とはいえ、売れる為には、皆と違うやり方を選んだ人間が「勝っている」と見せる必要があるので、とにかく1年以内に、お笑いコンクールの賞を全て獲ろうと考えた挙げ句、あまりにも短すぎる『ネタ時間』に着目して、発想ではなく、ボケの手数で勝負してみることにしました。
そんなキングコングが同期であったことも山里を男女コンビにさせた理由の一つかもしれない。
◎自分の立ち位置に気づく
しずちゃんは面白いボケ。その面白さを伝えようとしていない自分に山里は気づく。
自分はボケを際立たせる存在になるのがいい。
誰かが起こした笑いにコメントしたり上げ足を取っている時に笑いをとっていることに気づく。
漫才において普段の自分に近いキャラでないとやりづらい。
ノンスタイルの石田もライブで漫才で大切な事は以下の二つであると言っていた。
リアリティと伝え方
◎全てを頑張る燃料にする
山里にとって嫉妬は最高のガソリン。
嫌な事はどういう形で自分にメリットを持ってきてくれるかを考えて努力をし続ける。
嫌な事はパワーに変換できるのは山里の才能の一つ。
逃げないための言い訳を作り、強引でも自信になるエピソードを自分に言い聞かせる。
◎若林の解説について
山里は天才だと若林は言う。
コメントを拾うのが一番うまい芸人だと。
若林は山里を見て、2つ諦めたことがある。一つはうまいワードツッコミ。
もう一つは、妬み嫉みから生まれる鋭い視点からの笑い。
一番悔しい思いをしているのは、若林なのだから、「天才はあきらめた」などと言ってほしくはないと。
しかし「天才」だと言えば、それもまた燃料に更に努力のスピードを上げてしまうのが山里。
山里の成長は今後も止まらない。
◎今後の山里亮太
山里亮太は一生幸せになれないかもしれない。
それはどんなに成功しようと妬みや嫉み、山里を批判する人は0にはならないからだ。
0にならない限り山里は満足することはないだろう。
しかし我々はその方が幸せになれる。
どうしてか?
山里亮太は不幸をエネルギーにして、これからもまた我々に新しい笑いを届けてくれるからだ。
山里亮太は良い事はもちろん自分への酷評すらも燃料に変えて自分を成長させていく。
まさに全てを餌にして大きくなっていく、ポジティブモンスターなのだ。